本来その名の通り、白い野菜だった白菜。それが今では、こんな鮮やかな色をした白菜がある。この白菜を育てているのは、安芸太田町の穴ファーOKI。太田川支流が静かに流れる山間にあり、車を降り立った瞬間に深呼吸したくなる。
代表の沖貴雄さんが「太陽の白菜」を抱えてきた。「切ってみないと分からないんですよ」と半分に切って見せてくれる。なるほど、芯の方はオレンジ色だが、外葉の方は普通の白菜と変わらない。さらに「切ってすぐは分かりにくいんですよ」と言うので、しばらく談笑をして過ごす。10分も経たない頃にふと目をやると、さっきよりオレンジ色が濃い…? この白菜は、もともとオレンジクインと呼ばれる品種で、切るときれいなオレンジ色というのが品種の特徴でもあるのだが、沖さんによると、太陽の光の下で切ると、徐々に光り輝いてきて、10分経つ頃がもっともキレイなオレンジ色になるのだそう。煮込んでもこのオレンジ色は保てるので、彩りにもうれしい野菜だ。
白菜の一般的な品種は、黄芯(おうしん)と言われる。同ファームでは、シーズンには2000ケースの白菜を出荷するうち、約7割は黄芯で残りの3割くらいがオレンジクイン。栽培するときにも何か違う点があるのか聞いてみた。基本的にオレンジクインの方が病気に弱い。土の状態も異なる。黄芯を育てる畑だと、オレンジクインにとっては水分が多すぎるのだそう。栄養の吸収力も違うので、少し多めに肥料をやるなどの工夫をする。夏場はスイートコーンを作っているため、その残渣をすき込んでの土作り。土壌診断に基づいて、適切に施肥する。露地で作る分、できるだけ環境負荷のないように配慮しながら育てている。
白菜は英語でChinese Cabbage、中国からやってきた野菜のひとつ。そのせいか、中華料理風な煮込みやスープ、炒め物など加熱する野菜として使われることも多い。家庭で白菜漬けを作るのが当たり前だった時代は去り、白菜は半分どころか、1/8までにカットされて売られることもある。しかしこれが非常にもったいないことだと知ってほしい。特にこの「太陽の白菜」においては、できるだけカットしていない状態で買い求めたい。切ってから10分後の一番きれいな色を目の当たりにできるのは、この白菜を丸々の姿で買った方だけの楽しみなのだ。
まずは加熱しないで、サラダで食べてみよう。コールスローのように、調味料でしっかり和えて味わうのもいい。白菜といえば、なんとなく特有の青っぽい匂いがするものだと思っていたが、そんな香りはまったくない。むしろ、芯の部分がみずみずしく、包丁を入れた瞬間にその軟らかさが分かるくらいだ。野菜スティックにしておかず味噌と一緒なら、いくらでも食べてしまいそう。
そして加熱料理。煮込んでもオレンジ色がきれい。この色を引き立てたいなら、クリームベースの料理がおすすめ。ニンジンやかぼちゃ、チェダーチーズなど、同系の色をもつ食材と組み合わせてみると良い。
色々な楽しみ方ができそうで、イメージも膨らむ太陽の白菜。但し、出荷時期が10月下旬から12月までと非常に短い。でもちょうどハロウィーン、クリスマスとイベントメニューが人気の時期なので、チャンスも大きい!
太陽の白菜は、映える料理となって食卓を明るく照らす。沖さんは、太陽の白菜で、この安芸太田の地域がオレンジ色に輝いてほしいと願っている。
文/平山友美
料理/平山友美(太陽の白菜ポタージュ風)